大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)119号 判決

一 成立に争いのない甲第三号証(引用例)に記載されている説明および図面によれば、引用例の装置において、分離床をなすスクリーン22は、第1図、第2図の左方に傾斜しており、左右方向(放出縁17に沿う方向)に振動が与えられ(このような振動方向であることは第2図中の回転偏心部材10、往復腕11、支持用リンク部材32および33の配置から明らかである)、下面から空気が吹き上げられてスクリーンを通過するものであり、これらの総合力により後記のように重い材料と軽い材料とを分離するものであることが認められる。又スクリーン22は、放出縁の方にも傾斜しているものであることは、被告が主張し、原告もこの点については明らかに争わない。

引用例には「分離されるべき材料は、先ず自由空気流路Aの上方のスクリーン区域にシユート25から放出される。分離ベツドは、カム10と往復動アーム11とを含む駆動機構によつて往復運動を受ける。送風機8からベツドを通じて上方に指向した空気流と組合されてこの振動運動は、細かい(本判決注。「軽い」と同義と認められる。)材料をスクリーン上方僅かに浮遊させるか、又はスクリーンに軽く接触させ、重い材料を傾斜保持レール14の方へ上方へ搬送し、このレール14に沿つてこの重い材料が重い材料流出端26へと移動する。細かい材料は案内板28によりスクリーンの中心部分に外方へと案内され、次いで細かい材料の流出端29へと逆流し、第1図に最も良く示されているように、細かい材料の蒐集用に設けた区域30内へと下方に移動する。」第二列五三行目から六九行目、訳文六頁五行目から一九行目)および「微細材料受容区画室より上で隣に形成された区画室は、極微細材料より幾分重くて荒い粒状製品を受け入れ、微細材料区画室30から上方に形成されたそれぞれの区画室へ排出される材料はわづかに重い粒状材料である。妨害壁27により石等のような非常に重い全ての材料が最上部の区画室31に排出され、」(第二列七一行目から第三列七行目、訳文七頁一行目から八行目)と記載されているが、この記載と引用例第1図を総合すると、引用例の装置においては、分離されるべき材料は、シユート25から分離床のスクリーン22上に供給され、このスクリーン22上を移動する間に分離作用を受け、すなわち重い粒ほど振動による直進力によつて放出縁17の右方の部位に移動し、そして軽い粒ほど浮遊ないしスクリーンへの軽い接触のため振動の影響が少く、重力に従つて放出縁の左方の部位に移動し、各区画室に放出されることが認められる。したがつて、引用例の装置においては、材料がスクリーン22上を放出縁17まで移動する間に全面にわたつて、材料を粒の重さに従つて横に、いわば水平に分離する作用を基本としているということができる。

二 ところで、審決は、引用例の装置において、案内板28の上方のスクリーン22上に供給された粒状物はその場所において重いものが下方に軽いものが上方に予め分離される旨認定している。しかし、引用例においては、そのように「予め分離」するという技術内容の文言上の説明は全くない。かえつて、引用例においては、案内板28上方の領域およびそれに連なる右方の広い領域を区別せずに一つの全体として分離床と称しており、また、材料がシユート25から供給され放出端17に放出されるまでの過程を説明した前記第二列五三行目から六九行目、訳文六頁五行目から一九行目の記載部分においても分離床上での材料の分離作用についてそのような領域を区別することなく記述しているものと認められるのであり、この点と、特に、右記載部分中に「重い材料を傾斜保持レール14の方へ上方へ搬送し」とあるのに対して「細かい材料は案内板28によりスクリーンの中心部分に外方へと案内され」とあることを併せ考えると、引用例の装置においては、案内板28の上方の領域においても重い材料と軽い材料がある程度横に(水平に)分離されると解される。

三 被告は、引用例につき、前記審決で認定した上下分離が生ずる根拠として風の吹上作用と振動を挙げている。もとより、一般に下から空気流が吹き上げるスクリーンを一定方向に振動させるときは、スクリーン上に供給された粒状物は大体重いものが下に、軽いものが上に集まる傾向はあるといえる。しかし、それにもかかわらず、引用例の装置におけるスクリーン22は、放出縁17の方にも傾斜しているため、振動による前進力とほぼ直角の方向に重力成分が作用するから、下から吹上げる空気流の存在下では、案内板28上方の領域において、軽い材料が重い材料よりも案内板28寄りに集まる作用、即ち、横に(水平に)分離が起こる作用があるものと認められる。

被告は、この点につき、スクリーンの案内板28上方において、右後者の横(水平)分離の傾向があることを肯定しながら、右領域では、上下分離および水平分離のいずれも不完全であつて、この領域では、全体的に下方に重い材料が多く集まり、上方に軽い材料が多く集まるという集積状態となるが、他方本願発明においても、重い材料と軽い材料は、上下にはつきり二分されるのではなく、上下に大雑把な分離をされた程度で分離台上に運ばれるものと解されるから、両者の上下分離の状態に特に差異はない旨主張する。

そこでこの点を検討すると、本願発明の要旨中の「重い部分を充分に含む下方の層と該下方の層の上の該重い部分とは無関係な層とに予め分離され」との記載と本願明細書(成立に争いのない甲第二号証の二、三)の説明および図面(実施例として粒状体供給装置が狭い溝部を形成していることが記載されている。)を併せ考えると、本願発明における予めの上下層分離とは、重い材料と軽い材料とが境界の画然とした上下二層に分れることではなく、上層部には重い材料が実質的に存在せず、下層部ほど重い材料の割合が軽い材料より多くなるような、相当な厚さのある堆積状態をなすことを意味するものと解される。しかしながら、引用例の装置においては、なるほど被告のいうように案内板28の上方のスクリーン22の領域内では、水平分離が不完全であろうけれども、それだからといつて、本願発明における予めの上下層分離と差異のない状態が生ずると速断することはできない。

なぜなら、前記の被告のいう右領域における集積状態は、当然、材料がある相当な厚さをもつて堆積する状態を意味していると解されるが、引用例第1図によると、案内板28上方のスクリーン22の領域の横巾(案内板28と保持レール15との間隔)はシユート25の巾よりもかなり広く、シユート25がこの領域の中央よりも上方寄りに位置していることが認められるから、前述の横(水平)分離が生ずる傾向の存在下では、シユート25からの材料の供給量がさほど多くないときは(引用例においては、シユート25からの供給量の適正値について何も記載されていないことが認められるから、適正値を多量と断定することはできない)、被告のいうような厚さのある上下に分離した集積状態が形成される以前に、横(水平)に拡散しながら振動方向に移行してしまう状態も当然想定できるからである。

四 前記二、三で検討したところによれば、引用例の装置の案内板28上方のスクリーン22上において審決で認定しているような予めの上下分離が生ずるとは速断できないというほかはない。してみれば、審決には、この点に関する判断の誤りがあることになり、審決が、これを前提として、本願第一発明の進歩性を否定したのは違法であるから、取消を免れない。よつて原告の本訴請求は正当であるから認容する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

(一) 前後振動を粒状の物体に与える分離台に強制空気流を与え、該空気流にさらされる該物体が、重い部分の層と軽い部分の層とに分離し対応する流出部を通じて放出される異つた比重を備えた粒状の物体を分離するための方法に於て、粒状の物体が分離台上に持ち来たらされる前に重い部分を充分に含む下方の層と該下方の層の上の該重い部分とは無関係な層とに予め分離され次いでこれらの層の状態を変えずに分離台上に持ち来たされることを特徴とする前記方法。

(二) 通気性を有する分離台と、該分離台の傾斜とは逆方向に該分離台に係合する振動装置と該分離台の下方に設けられ且つ該分離台方向に指向している気体供給装置とを備え、その際該傾斜分離台の最高位置範囲に、振動に対して略々横方向に走り且つ分離台を限定する放出縁に接続して、重い粒状物体用の流出部が、及び該分離台の最低位置範囲に、振動に対して略々横方向に走り且つ該放出縁に対置されて該分離台を限定する軽い粒状物体用の溢流縁に接続して、放出装置とが設けられている、粒状の物体を分離するため、特に穀物を乾燥洗浄するための装置に於て、物体供給装置が、通気性を有する底部と下方から該底部に指向している気体流装置とを備え且つ該分離台から分離した振動溝として形成していることと、該振動溝が重い物体上に軽い物体を層分離するのに充分である長さに形成されていることと、該放出縁と該溢流縁間の範囲に該分離台に開口する該振動溝開口部が該溝と該分離台との同一平面に設けられた底部を有するように配置されていることとを特徴とする、粒状の物体を分離するため、特に穀物を乾燥洗浄するための装置

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